おしり(肛門の治療)
肛門の病気による症状は出血、痛み、脱出、排便異常などがあります。痔核、痔瘻、裂肛が多くを占めますが、様々な病気が存在します。
また直腸がんなども同様の症状を訴えることも多いので、早期に病院を受診していただきたい。
痔の治療
痔核(いぼ痔)
切らない治療を優先
<内痔核の治療>
肛門の閉鎖に関係しているクッションが病的に大きくなったものが痔核です。悪化すれば出血、脱出、痛みなどを伴うようになります。食事の内容に注意し、便秘、下痢を避けて、排便をスムーズにするようにします。
坐薬や軟膏も使用します。以上の治療で効果がなければ手術を考えます。まずALTAによる硬化療法があります。
痛みもなく外来での治療が可能です。大きな痔核の場合は結紮切除術があります。1カ所の切除は外来で可能ですが、2カ所以上の切除では入院が必要です。
<外痔核の治療>
肛門の外側に急に血栓を作る病気で、腫れと痛みを伴います。多くはおしりの安静と軟膏、内服薬で治ります。痛みが強い場合は切除も有効です。
裂肛(切れ痔)
特に女性に多いです。
大きな硬い便などで肛門に創ができる病気で、排便時の痛みや出血があります。排便の管理が大切です。食物繊維をたくさん摂取し、水分も十分に取ります。便秘の時には適切な下剤の服用を勧めます。軟膏も使用します。以上の治療で効果がなければ手術の適応です。
外来での括約筋切開術でほとんどの患者は治ります。稀に肛門狭窄が強い患者は入院での皮弁による肛門拡張術が必要です。
痔瘻(あな痔)
特に女性に多いです。
肛門腺に細菌が侵入し、感染が生じて外側の皮膚と交通が生じたものが痔瘻です。痔瘻に膿みが溜ると肛門周囲膿瘍となり、強い痛みと腫れが生じます。
痔瘻は手術が必要です。肛門周囲膿瘍の時には切開排膿術を行い、膿みを出し、炎症が落ち着いてから根治手術を行います。単純なタイプの痔瘻は切開開放術をします。外来ではシートン法というゴム糸を通して少しずつ締めながら切る手術を選択します。
治るまでには2〜3ヶ月必要です。肛門が緩い時には括約筋温存手術をしますが、切開開放術に比較して再発が多くなります。複雑な痔瘻は2週間程度の入院の上での手術になります。
痔瘻の原発巣のある肛門後方を大きく開放し、外来でゴム糸により少しずつ括約筋を切る手術を選択します。治るまでには3〜6ヶ月必要です。
直腸脱の治療
最近高齢者の増加に伴い増えています。骨盤底の弱さと直腸の固定の弱さによって、直腸が脱出します。治すには手術が必要です。肛門側から脱出した腸管を縫縮するDelorme手術や脱出腸管を切除縫縮するAltemier手術です。
リスクが高い患者は局所麻酔で消痔霊による直腸固定を行います。若い方は開腹による直腸固定も適応です。
便漏れ(便失禁)治療
高齢者の増加に伴い便の漏れを訴える患者が増えています。出産時の会陰切開、肛門手術による括約筋の切断によるものが多いが、原因がはっきりしないことも多い。
治療はバイオフィードバックなどのリハビリやポリカルボフィルカルシウムの服薬を試みます。このような治療が奏功しない場合は外科的療法を行うこともあります。
お腹(大腸の治療)
近年、生活習慣や食生活の欧米化に伴い炎症性腸疾患や機能性腸疾患が増加しています。炎症性腸疾患は正確な原因は解明されていないが、免疫異常が関与していると考えられています。
炎症性腸疾患にはクローン病と潰瘍性大腸炎があります。クローン病は消化管のどの部位にでも潰瘍ができ、腹痛、下痢が生じる病気です。動物性タンパク質や脂肪の摂取が悪くする要因です。
痔瘻、裂肛などの肛門病変で初発することも多い。治療は薬物療法と栄養療法が主体です。最近、非常に効果的な薬物が出ています。
潰瘍性大腸炎は大腸に潰瘍やびらんが多発し、腹痛、下痢、粘血便が生じる病気です。薬物療法が主体ですが、重症例では手術が選択されることもあります。
過敏性腸症候群はストレスが関与して腹痛や下痢便秘などが生じる病気です。まず食事と生活習慣の改善の指導をします。必要に応じてポリカルボフィルカルシウムを投与します。
消化管運動調節薬、抗不安薬の投与も考慮します。改善がなければ心療内科的な治療も必要となることもあります。
大腸内視鏡検査
多くの方が大腸内視鏡検査はつらいものと誤解しています。軸保持短縮法という腸管を短縮して挿入する方法では10分以内で苦痛なく検査ができます。
また大腸ポリープは癌化することもあり、多くの場合は検査時に切除することも可能です。最近、大腸の病気が増加しているので積極的に検査を受けることを勧めます。